介護士の給与が低い理由について

「夜勤を4回しても手取りが20万もない」

「日勤帯だけで、給与が高い看護師が恨めしい」

「昇給がそもそもない」

「このままじゃ、子供を大学へやれない」

「やったとしても、自分の老後の蓄えがなくなる」

介護士の給与って低いですよね。

私も介護士として働いてきて、給与の低さに日々悶絶しています。

独身の頃はまだよかったですが、家庭を持つと、まさに火の車。

小遣い0円生活です。

そもそも、なぜ介護士の給料は低いのでしょう。

景気に左右されないとか、感謝される仕事とか、ホントはかっこいいなんて、金銭面以外のメリットを押す意見は理解しています。

しかし、それとこれは別問題で、気持ちも必要だけど、気持ちじゃ腹は膨れないし、犬じゃないんだから腹が膨れれば何でもよいわけじゃありません。

決して贅沢は言いません。

頑張って結果を出せば、一般の人と同様に、家庭を持ち、子供に十分な教育を与え、自身の老後に備えれるたけの給料を頂きたいだけなんです。

前編 : なぜ介護士の給料が低いのか

後編 : どうしたら介護士の給料は上がるのか

この2点について前編と後編の全2回に分けて、私ごとで感情的になりがちな問題ですが、できるかぎり客観的に考察したいと思います。

前編の今回は、介護士の給料が低い理由についてです。

ご興味のある方、当事者の方は、是非おつきあいください。

なぜ介護士の給料が低いのか

私の考える介護士の給料が低い理由

  1. 売り上げに上限がある
  2. 誰にでもできる仕事だと、経営層が考えている
  3. 資格によるカースト制度がある
  4. 職能団体が脆弱
  5. 評価制度の導入が困難

1. 売り上げに上限がある

富裕層向けの有料老人ホームなどを除けば、ほとんどの事業所は介護保険事業を売り上げの柱にしています。

「家賃や共益費、食費などもとっているだろう」といわれるかもしれませんが、自由に価格設定できるわけではなく、周辺の相場に合わせるよう介護保険事業所として指導があります、

決して、それで利益を出しているわけではありません。

介護保険事業だと、介護度に応じて一定の金額しか請求できないので、介護度に応じてみんな一律です。

つまりは、どれだけ良いケアをする人がいたとしても、それは、稼働率につながるかもしれませんが、稼働率100%=売り上げの上限となり、仮に100%状態でさらに良いケアをしたとしても収入は上がらないし、収入が上がらないので給料も上がらないということです。

介護保険事業を収入の柱に据えていている限り、処遇改善金と昇給、出世する以外、つまりより良いケアをしただけでは給料は上がりません。

誰にでもできる仕事だと経営層が考えている。

介護という仕事が誰にでもできる仕事だと多くの経営層が考えていることも原因の一つです。

誰でもできる仕事だから、介護士の代替はいくらでもいると使い捨てのような扱いで、使い捨てなら安いもので十分と、生かさず殺さずの処遇に置かれるのです。

経営層が介護士という総称で我々を捉えているかぎり、その法人では介護士の給与は上がらないでしょう。

資格によるカースト制度がある

間違いなく、介護施設の主力は介護士です。

看護師でもリハ職でもケアマネでも管理者でもありません。

入居者を24時間365日、排泄・入浴・食事の身体介助を提供しているのは、まぎれもない介護士です。

しかし、給与が一番低いのも介護士なんです。なぜでしょう。

高い専門性が要求される医療の現場である病院であれば、助手たる介護士の給与が、看護師より低いのは理解できますが、なぜ、ほぼ介護業務しかない介護施設で、介護の給料が低くて看護の給料が高いのか理解に苦しむところです。

慢性期の介護施設においても、当たり前の如く、看護師だから給与は高く、介護士だから給与が低い。

これではまるで、職種によるカースト制度です。

4. 職能団体が脆弱

いまでこそ、日本人の平均年収より給与水準の高い看護師ですが、高い専門的知識や技術を有してるにも関わらず1960年代頃までは月の夜勤が10回を超えたり、ワンオペだったり、それに対する手当が不当に低かったりと、ブラックの代表的な職業でした。

しかし、看護師の職能団体である日本看護協会を設立し、看護師の意見を政界へ届けるべく、看護師の国会議員を擁立してからは看護協会の発言力を強めることとなり、看護師の労働環境の改善に繋がった結果、現在では、日本人の平均年収以上の給与水準の職種となっています。

その日本看護協会ですが、平成22年の数字では、協会への入会率は全就業者数の47%にのぼります。

一方、我々介護士の職能団体の状況はどうでしょうか。

日本介護福祉士協会がそれに当たり、入会率は4%ほどで、47都道府県全てに支部がありますが、会員が減少傾向にある支部もあるそうです。

数は力とも言います。Twitter同様、フォロワー数は、実績であり、根拠ともなります。

いくら、良いことを提言し行動しても、「誰も見てもなければ、聞いてもない」では意味がありません。

5. 評価制度ので導入が困難

給与は、頑張った度合いに応じて支払われるものではなく、頑張った結果に応じて支払われるものです。

他職であれば、売り上げや稼働率、新規の件数など数字で評価できるものが、介護士では何を評価基準とするのでしょう。

評価制度を導入した介護事業所の多くは、介護の現場を知らない社労士が作成する評価基準と、私の様な人として未達成な上司の主観による評価は、とても公平とは言いづらい現状です。

「他人が他人を評価する」この制度運用は、評価者の「真摯たるべき資質」に依存しているため困難で、良かれと思って導入したら、逆に、離職率を高める結果になりかねません。

まとめ

2021年現在、日本では介護士が足りず4年後には40万人の介護難民が予想されています。

足りない原因は、3kなのに給与が低いからに他ならないのは周知の事実。

介護士の給料が低い原因を、個人の能力の問題として片付けてしまうのはもったいない。

社会全体の問題として捉え、年老いたら誰か面倒見てくれる、安心して全力で老いれる社会を目指しましょう!!